変形性股関節症プロフィール(7)出来るんじゃないですか?

その頃私は、おそらくそれまでの経験から、整形外科と理学療法士さんには多くを期待してはいけない、という心のありようがデフォルトになっていて、その時も『姿勢の教科書』の中の骨盤前傾修正エクササイズを自分で行うのに医学的なアドバイスをいただければ嬉しいぐらいの気持ちでクリニックの予約を取ったように思う。

 

初診時には医師に、リハビリ歴も長くなって来ているので、出来れば股関節症に詳しいPTさんをお願いしたいと頼んでみたが、その前に既に担当理学療法士は決まっていて、リハビリ予約は既に取った上での受診だった。

 

こうして担当となった恩師PTは、確か30歳過ぎてそれまでのお仕事を辞められてからお勉強されて理学療法士になられた方で、クリニックに来られる前は、地方の病院の回復期病棟で3年間、主として脳血管障害の後遺症などのリハビリを行っておられたということだった。

 

股関節症についてどのくらい知っておられるのだろう?という不安は正直感じてしまったのだが、それでも初診時から恩師の印象はとても良かった。患者の心に寄り添おういう姿勢がすぐに伝わり、お話していて安心出来たことと、『姿勢の教科書』を持参した私の、様々な医学的質問に対しての回答が、どれも非常に詳しく且つ大変分かり易かったからだ。誠実そうで、ものすごく頭の良さそうな先生、というのが恩師の第一印象だった。

 

良く分からないけれど、なんだか楽しみな予感がした。クリニックから帰宅してすぐに、紹介者であるバイト先の若い上司にお礼のLINEを入れたのを覚えている。彼女の担当PTのお名前を聞き忘れていて、感じが良い先生だったからもしかして同じ先生かな?と思ったのだが、確認したら違う先生だった。紹介時に担当PTのお名前まで聞いていたらまた全然違う流れになっていたかと思うと、出会いは不思議だなあと改めて思う。

 

こうして恩師PTの治療が始まり、それは前半5か月、2か月のインターバルをはさんで後半3か月、合計8か月に及んだ。

 

治療の内容をここでとりあえずざっくり説明すると、

 

前半は

①徒手療法による呼吸関連筋リリースをしながら必要な医学的知識のインプット

②関節ファシリテーションから筋筋膜張力と循環器系の賦活を促すボディワークの伝達と実施

 

後半は

①「痛み」の本質についての理解を促す(カウンセリング的な内容)

②ヨガアーサナの指導

 

恩師PTから受けたこの8か月のリハビリ指導のお蔭で今の私がある。3年前には別の整形外科で別のPTの先生から杖の着き方の指導を受けていた変形性股関節症末期患者の私は、今、毎日ヨガを行えている。

 

ところで私は最初、アーシングの抗炎症効果を痛みのある方々に広めたいという動機でこのサイトを立ち上げた。

 

アーシングの効果は少なくとも私には絶大なので、こんなに手軽で無尽蔵で副作用もない痛みの緩和法があることを、ほとんどの関節疾患患者は知らないという事実はあまりにももったいないことだと思った。

 

ただ、サイトの方向性を決める過程で迷いもあった。

 

私は確かにアーシングから恩恵を受けて今の状況をキープしているが、アーシングはあくまでもサポートであり、恩師PTのリハビリである程度の水準まで回復した上でアーシングと出会っている、この事実は大きい。

 

恩師の治療効果にヨガとアーシングの要素が加わり、それら3つが相乗的に働き始めたところに、恩師の後に私の治療を引き継いで下さっているPT先生からの、また別の角度からの治療が加わり、そのすべてが融合して維持されているのが現状の私なのだと思う。

 

当初このサイトをアーシングの紹介に特化しようと思った理由は、恩師PTの治療はカスタムメイドなものであり、他の人に当てはまるとは限らないことや、そもそも同じような治療の機会を他の人が持てる可能性は高いとは言えないこと、あとは私自身が、恩師の治療の全容をきちんと理解しているわけでもなく、それを他の方々にうまくお伝えする自信がなかったことなどがある。さらに恩師PTの治療を発信することなく、今のPT先生の治療だけを発信するのでは整合性が取れないような気がした。

 

その気持ちが変わって来たのは、今セッションにおけるPT先生とのちょっとした会話だった。徒手治療→歩容確認→徒手治療、と繰り返す中でPT先生はおっしゃった。

 

「でもこの治療も、エビデンスがあるわけじゃないんですよ。多くの患者さんを診て、実際にやってみて、こうじゃないか?というのはありますけど、それはむしろ感覚的なもので数値化出来ないので、科学的、という方向には行かないんです。」

 

PT先生にはアーシングの抗炎症作用についての論文を実際に読んでみていただき、それをサイトに掲載する是非について考えるヒントをいただいたりして来た。その論文の時にも思ったのだ。

 

エビデンスって何?

特にカスタムメイドな治療が必要な整形外科の保存療法領域において、エビデンスって何なのだろう?

 

理学療法士の方々が専門知識を背景に患者さんに対して行っておられるカスタムメイドな治療が、エビデンスがないから科学的ではないですというのなら、患者としての私は科学的じゃなくても良いからカスタムメイドな治療の方を取る。

 

変形性股関節症で整形外科を受診すると、医師はまずレントゲンを撮り、レントゲンに緊急の問題がなければ痛み止めや湿布を処方する。それでも痛みが続くなら手術を勧める。考えてみればそれらはどれもエビデンスがあるからで、逆に言えばそれ以外の治療はグレイエリアになるということなのか?

 

「でも」

 

PT先生は施術の手を止めることなく、こう続けた。

 

「ひとりひとりの患者さんについて、こういう治療をしたらこういう結果だったというようなケーススタディとしてならば、治療を発表することは出来るんですよね~」と。

 

ケーススタディ?!

 

アーシング論文のご相談に乗っていただいた経緯もあり、サイトのURLはあらかじめお知らせしてあったPT先生は、意外にも、このサイトの数少ない読者のひとりになって下さっていた。興味を持って読んでいますと言って下さり、それは意外でもあったが私にとっては一種の光にもなった。

 

恩師PTの治療から始まった、様々な要因の恩恵のお陰で、今こうして毎日ヨガが出来ている自分がいる。変形性股関節症保存療法治療のグレイエリアにおいて、私の経験は標準的なものとは言えないかも知れない。でも、標準的じゃない経験にも、あるいは標準的じゃない経験だからこそ、ケーススタディ的な意味はあるのかも知れない???

 

 

最後にひとつだけ、心に残る恩師PTの言葉をご紹介して、プロフィールを終えようと思う。

 

恩師PTは私のための運動メニューをいくつかのボディーワークとして作成して下さったのだが、その動きの一つ一つは、ヨガのポーズに近かった。動画を見て最初は、絶対無理!と思った私だったが、練習しているうちに不思議と少しずつ出来るようになって行った。そんな中、多分一年前ぐらいのある日、私は恩師に言ってみたことがある。

 

「先生、実は私、太極拳かヨガを、やってみたいと前から思ってたんですよね~」

 

それに対して恩師はこともなげにこう言ったのだった。

 

「いいんじゃない?出来るんじゃないですか?」

 

 

↑実はこれはプロフィール(5)太極拳の続編ですので、まだ読んでない方はこちらもどうぞ。

これでプロフィールが終わったつもりが翌日ヨガしながら、全く終わってないことに気づきました(^^;

⇒ 変形性股関節症プロフィール(8)賢者のポーズ